アニメ『∀ガンダム(ターンエーガンダム)』より、同名の主役機ターンAガンダムです。バンダイ 1/144スケール HGCCシリーズ。模型屋の店頭で見つけて一目惚れ、勢いでなんとか完成させました。
豊饒な物語
富野由悠季の『ターンエーガンダム』は、彼が混乱の極地の中で作り上げた『機動戦士Vガンダム』とある意味対をなす作品で、作家としての混乱が豊饒へと回復した、オトナになったからこそわかる素晴らしい物語です。
はるか未来、幾度の文明廃退ののち19世紀ほどのレベルに復興したアメリカの人々が、月からやってきた未来人のごとき別種の人類と出会う、一種のファーストコンタクト・SF。ふたつの異質な人々の暮らしと気もちが丁寧に描かれ、素晴らしい説得力を得ています。この作品でガンダムは、ふたつの世界を繋ぐマシンとして表現されました。
シド・ミードの描く見事な曲線! 美しい機械、美しいプラモデルでした。
モビルスーツづくりってむづかしい
バンダイのプラモデルは接着剤要らずのスナップフィット・キット。でもこれって、塗装までちゃんと作ろうとすると逆にすごく手間がかかる。はめ込んでしまったせいで塗り分けがうまくできなかったり、塗装でパーツが割れたり、ごく基本的なところでつまづいて諦めたことが何度もあります。
はめ込みピンや穴を切って緩め、プラ材にかかる圧を減らし、分解しやすく、またエナメル塗料でスミ入れしても割れにくくするという作業がほぼ「必須」と理解するのに、時間がかかりました。
工作はヒゲをシャープにしたり、ちょっと目立った肩パッドの脇の部分を目立たなくした程度です。切った張ったの工作は腕がついてかないので無し。
そんな工作なしでも、なんとも美しい立ち姿。付属の盾やら銃やらも作りましたが、ターンAの人型としての素性の美しさが大好きで、取りつけませんでした。
塗料えらび
今回せっかく主役なのだからと、ミリタリー系の色ではなく、色気をだして普段使わないガイアカラーで、三原色の塗料を買ってきました。
- コールドホワイト: 微かに青味がかった濁りのある白。写真は調整がうまくいかず赤味がかって見えるけれど、すっと深みのある白さが出ます。
- マーズディープブルー: 藍に近いにごり・くすみのある深い青。火星の青って矛盾した名前ですが、強引に解釈すれば、火星の夕焼けのような……。
- ローズディープレッド: まさに薔薇の花のような黒みのある赤。
- マイルドオレンジ: これはぴったりの言葉がある。かたゆで卵の黄身の色!
関節は塗装ハゲが怖くて、モデルカステンの専用「関節カラー」を買ってきました。高いけど、完成させられないよりは……。
ま、それでもハゲたんですが。もっとヤスらないとダメか……。
レッドは色がビビッドすぎたのでホワイトで1:1ぐらいに割って、それに合わせてブルーもイエローも、少しホワイトを。なんだかんだで全長20mの巨人を表すには、濃すぎる色合いなので。
頭の∀マークは、エナメルのクリアーグリーンとクリアーブルーを1:1で混ぜたものを流し込んでます。 ほんとはその下に更に横棒を引かないといけないんだけど、そっちは凸モールドだったんでパス。お尻の上にも同じマークがあり、そちらにもチャームポイントで色を入れました。
目の表現はラッカーのゴールドで目を入れた後、エナメルの黒で縁取りを塗ったり消したり塗ったり消したり。それでもスキっと塗り分けられず、ざんねん。
キレイなスミ入れ
戦車模型ではウェザリングの一部とみなせるスミ入れも、今回のようにカラフルで清潔さを求める塗装ではそうもいかない。なるべくふき取る部分が多くならないように、タミヤのスミ入れ用グレイのボトルをよく振って、面相筆に取ってはすっと入れ、またボトルを振ってはすっと入れ……。なんと根気のいる作業!
スジ彫り部分だけならいいんだけれど、L字角にスミを入れようとするとまっすぐに入ってくれず、泣きました。
赤・青、そして指などのグレイ部分はグレイでは弱いと思い、黒でスミ入れ。でも指のスミは強すぎですね。失敗しっぱい。
ナノマシンと架空の素粒子物理学による機体制御など、高度なSF設定を詰め込んだターンAタイプ。外見上もっともSFらしく見える部分が、足の裏側のスラスター・ベーンと呼ばれる推進器アレイ。ここは設定を外れて、グレイではなくレッドゴールドで塗っています。腰のクリアパーツも、裏からゴールドで不透明化。
慎重に作ったつもりが、まだまだやりきれない部分がたくさん。頭部は肝心のヒゲパーツがしっかり奥まで差し込めず、目の表情が輪をかけて見えづらくなってしまいました。
AFV、船、モビルスーツ。それぞれ作りごたえがぜんぜん違います。だから楽しいんですが、集中力が切れないようサクっと作るつもりでも、各工作がまだ慣れていないせいでなかなか進まない。もうちょっといろいろ作って、勘をつかみたいものです。