2012年のおおみそか。静岡の実家に帰省しようと家をでる直前、ふと、船で帰ってみようと思った。
静岡までは、盆でも正月でも“こだま”に乗れば、当日指定でも十分座席が取れる。自由席でも十分だ。今回も予約していなかったので、中野の駅で代わりに修善寺行きの“踊り子”を取ることに。
むしろ“踊り子”のほうが座席をとれないのではと思ったが、駅員さんが端末をたたいた瞬間、たまたま1席だけキャンセルがでて、それを取ることができた。ふたりで目をあわせて笑う。これで2012年の運も使いおさめ。
東海道線のホームは、このアングルで東北新幹線を見上げられるのがたのしい。“踊り子105号”は9時ちょうどに東京駅を出て、一路熱海へ。熱海駅では車体を分離して、前部7両は伊豆急下田へ、後部5両は修善寺へと向かう。
11時8分、修善寺着。修善寺は寺も温泉もある風光明媚なところなんだけど、今回の目的はあくまで“帰省”。目の前にバスが来ていたので、そのまま乗り込んだ。東海バス堂ヶ島・松崎行 11時20分発。
伊豆はふしぎな土地だ。静岡本土では「北は山、南は海」と決まっているので、南から北に向かって流れるこの半島はまさしく異国。かつて独立した島だったというのがよくわかる。
そんな狩野川の両側にか細い氾濫原が広がり、そこに街や水田が張り付いている。その向こうはすぐに山。修善寺までくると平地の幅はますます狭まり、東西に加え南にも山が迫る。どんづまりだ。
伊豆は海岸沿いの港町ばかり訪れていたが、今回はじめて、伊豆のまんなかがどうなっているのか実感できた。
山道をごとごとと1時間ほど進む。峠を越えたあたりでぱっと海が見えて、それからまたしばらく道を降ると、土肥の街に入る。砂浜の向こうの海は大荒れだった。対岸に見えるのは御前崎から吹上ノ浜まで、静岡本土の海岸線とその向こうの山並み。
12時のフェリーには間に合わなかったので、14時の便までの時間、土肥金山であそぶ。これが存外に面白かった。なんというか、乗り物のないディズニーランドのアトラクションだ。
江戸時代の金山労働者のロボット。遠目からはモノホンに見える。
黄金の金山労働者。だんだん怪しくなってまいりました。
炭鉱の中にもロボット。
こんにちは!
そしてギネス記録という250kgの金塊。反射のせいか、炭鉱の湿度にやられたせいか、カメラのピントがあわない。
ひととおり観終わってフェリー乗り場に向かう。乗り込むのはエスパルスドリームフェリー、14時40分の便だ。1500トンのカーフェリー“ふじ”が、荒波の中をやってくる。
この日のしけはかなりのもので、白波が堤防を越えてはいりこむぐらい。入港するフェリーも、波に揺れて水面下のバルバス・バウがときおり見えるほどれだ。接岸した自動車の渡し板も左右上下に揺れるので、運転手が振り落とされないか心配してる。
無事に出向。波しぶきが船上までのぼり、虹を作ってる。3階の展望室の窓も、全面潮で洗われるぐらいだ。喫水線から10メートルぐらいあるはずなので、相当の波。
そして、フェリーが戸田岬(へだみさき)を超えると、見事な富士山が姿を現す。
この土肥‐清水航路は、海の県道に申請されているそうだ。この眺めを満喫するだけで、フェリーに乗る価値がある。
フェリーに乗っていた時間はバスに乗車していた時間よりも短く、あっという間に清水港に着く。伊豆と静岡がこんなに近いなんて、知らなかった。
ここから地元市まで東海道線で帰って、ことし最後の旅は終わり。年末を締めくくるよい景色を、満喫できた。