旅と模型

Gasoline's "Travel & Build" weblog

仙台・松島・石巻の旅 Part1

6月の終わり、ほとんど予定も立てず、仙台に行ってみた。鉄道模型誌を読みあさるうち、『旅と鉄道』なんて雑誌まで読んでしまったために、ローカルの気動車に乗りたくて、いても立ってもいられなくなってしまったのだ。

実は国内旅行をほとんどしたことがなくて、筑波より北に行くのはこれが初めて。なんの予約もせず、中野駅の券売機でいきなりE5系新幹線のチケット、それも『グランクラス』を取ってしまった。3秒後に提示された金額に顎が外れて後悔するのだが。

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やわらかな琥珀色で統一されたデッキで、わずか1時間半の超贅沢をあじわい、仙台駅に着く。初夏の仙台はさすがに気温も高く、ヘンな話だけどアジアの別の国に来たみたいだ。

松島、石巻まで足を延ばしてみようと思い、仙台駅から仙石線に乗った。電車は都内のJR線と変わりない、通勤用の205系。どこにでもある町並みは、東塩釜を超えると次第に緑が増え、海が見えてくる

松島海岸を超えて高城町駅に着くと、ここから線路がなく、代行バス区間だ。松島海岸駅からだと乗換が楽だったらしいけど、高城町からだとすこし離れた公民館前まで歩いて、代行バスを捕まえることになる。観光バスタイプの代行車は、奥松島パークラインを進んでいく。

 

リアス式海岸の海と山がいっしょになった光景は、まっすぐな海岸が続く静岡中部で生まれ育った人間には珍しい光景だ。すぐそばに海があるとは思えない田畑を抜け、白い岩に囲まれた谷あいに入ると、うず高く積まれた牡蠣殻やホタテのブロックが見える。ああここ、産地なんだ。なんて思っていると、被災地が突然顔を出した。

車道も歩道も砂埃をかぶり、更地が続いている。さっきまで乗っていたはずの仙石線も、東名、野蒜のあたりでは線路がひしゃげ、ほとんど砂の中に埋もれている。更地には、白いコンクリの土台が残っていて、真ん中には花が供えられていたり、小さな祠が置いてあったりする。

 

15か月前に、何千の命が流れてしまった土地の上を、バスが、トラックが、乗用車が、走っていく。ひしゃげたままのガードレールの向こうで、稲が青々と育っている。不謹慎なのかもしれないけれど、頭に思い浮かんだのは、「親が死んでも腹は減る」言葉だった。

もし起きていたのが東海地震だったら、こうやって、日常を生活していたんだろうか。

そんなことを考えているうちに、陸前小町について代行バス区間が終わった。ディーゼル気動車だ!

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この気動車キハ110も、本来仙石線を通ってるハズのないものだ。だって仙台で乗ったときは電車だったんだから、ここも電車でなきゃおかしい。でもまだ、石巻側の送電が回復していない。だからここでキハに乗れる。それは奇妙なことだ。

……なんて、そんな震災への想いも、じつは子供の頃以来ひさびさに乗ったディーゼル列車の感触にウキウキしてどこかへいってしまったのが、正直なところ。

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石巻に着き、中心地を歩いてまわる。商店街の歩道の屋根がずっとひしゃげていたり(ここまで水が届いたんだ)、普通に営業している店のとなりが廃屋になっていたり。アイスクリームをかじりながらてくてく歩く。橋を渡ったところにある石ノ森章太郎漫画館は閉館中だったけれど、その存在感はまさに異常。まるでウルトラセブンなんかの異星人の円盤そのものだった。

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なにかがあったところ。

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石ノ森漫画館の向こうに建つ、半壊の自由の女神。たぶん震災前は、安っぽい模造モニュメントだったんだろう。でもいまは、俄然そのアートとしての意味を取り戻している。対岸の復興マルシェで海鮮丼を食べた。

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サルベージ船!

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その足元にたたずむカモメ。

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駅周辺を歩いただけではわからないけれど、さっきの奥松島に続く海岸エリアは、丸ごと街が削られ、その街が、巨大な瓦礫の山となっている。この、人の記憶の破片でできた巨大な質量を、なんとかしなければならない。それがすごくよくわかる。うちの田舎は瓦礫処理をしているので、せめてもと、ふるさと納税を考える。

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河口の神社に裏にある小高い丘に上ってみた。あたりを見渡そうとおもっただけなんだけど、頂上で遭遇したのは、イガグリ坊主の中学生の股間に、同級生らしいジャージ姿の女の子が顔をくっつけている光景だった。

 

そんなわけで、石巻観光でもっとも記憶に残ることになったのは、震災の傷あとではなく、盛りがついて昼前からどうにも止まらなくなってしまった、中学生カップルの表情だった。むしろあの男子生徒のトロけそうな表情なんか早く忘れたいのだが。

ま、親が死んでも腹は減る。元気があってよろしいんじゃないでしょうか。